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R Clustering 日本の自治体を人口構成・産業構成でクラスタリング

R Program DSL 課題 クラスタリング

今回は、日本の1,835の市区町村(2015年現在)を人口構成と産業構成のデータで分類してみる。今回は「個々を具体的に認識できる範囲」ではないので、非階層クラスター分析(k-means)をしてみることにする。

分析の目的

最近「地方創生」「少子高齢化」「地方の地盤沈下」などどいう言葉が飛び交う中、本当のところはどうなっているのか、簡単に取得可能な人口構成と産業構成のデータを使って、どのような自治体があるのか、可視化をしてみる。例えば、農村を維持しながら、若者を引き付け、人口も増加し、全体の活力が維持されている自治体を探してみたい。したがって、1,835の市区町村をクラスターに分けた後、人口が最も増加している上位5自治体に注目することにする。

データの取得

総務省統計局の2010年と2015年の「国勢調査」のデータから少し加工した次のデータを用いることにする。

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クラスターに分ける

k-means法を用い、クラスターに分けることにする。その際、クラスターの数はWSSの減少幅に基づき、適切な木の深さを設定することにする。結果、 10個のクラスターに別れることになる。なお、昼間人口比率(夜間の人口に対する昼間の人口の比率、Hiru_divided_Yoru_ratio_2010)、農業従事者の割合(A_Agriculture)、漁業従事者の割合(B_Fishery)、鉱業従事者の割合(C_Mining)、電気ガス水道事業従事者の割合(F_Utility)に関しては極端に値が大きい自治体があるため、分布の平準化をするため、等頻度でBinningをしている。

クラスタ1 工場城下町タイプ

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工場従事者の割合(E_Manufacturer)が大きく、それにともなって核家族世帯(KakukazokuPct)や子どもの割合(Under15Pct)、生活関連サービス・娯楽(N_Entertainment)の割合が比較的大きいと想定される。工場誘致やその維持に成功している自治体と言えよう。実際に2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "熊本県大津町" "7.19"
[2,] "宮城県大衡村" "6.96"
[3,] "静岡県浜松市浜北区" "5.3"
[4,] "愛知県高浜市" "5.05"
[5,] "愛知県大府市" "4.6"

となっている(単位は%)。Wikipediaによると、熊本県大津町は本田技研工業の熊本製作所があり、リーマンショック前後に国内外の生産が集約されたようである。その影響もあって、5年間で人口が7%増加している。宮城県大衡村は、2000年から2010年にかけて人口は減少していたが、2010~2015年は増加に転じている。2011年にトヨタ自動車の小型車向け生産拠点が移動した影響のようである。工場誘致に成功している自治体はどのような地理的、法的特徴があるのであろうか。興味深いテーマである。

クラスタ2 住みやすいベッドタウンタイプ

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IT(G_IT)、卸売・小売業(I_Distributor)、金融業(J_Financial_business)、教育産業(O_Education)の産業があり、それに伴い、人口増加(PopIncreasePct)が比較的大きく、核家族世帯の割合(KakukazokuPct)、15歳未満人口割合(Under15Pct)も比較的大きい。2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "愛知県長久手市" "10.71"
[2,] "埼玉県戸田市" "10.57"
[3,] "東京都江東区" "8.1"
[4,] "埼玉県さいたま市浦和区" "6.64"
[5,] "千葉県流山市" "6.36"

となっている(単位は%)。1位の愛知県長久手市は、wikipediaによると「名古屋市のベッドタウンとして発展しており、東洋経済「住みよさランキング2015」では、県内1位、全国2位にランクイン」ということである。ベッドタウンとしての開発が進んだ影響で人口が増加している自治体と言えよう。

クラスタ3 希少産業タイプ

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医療・介護(P_Medical)、生活関連サービス・娯楽(N_Entertainment)、金融業(J_Financial_business)、電気・ガス・水道(F_Utility)、漁業(B_Fishery)、鉱業(C_Mining)が主であり、人口増加(PopIncreasePct)は殆どない。漁業、鉱業などの従事者割合が大きい自治体は数少なく、「希少産業」タイプと言えよう。

2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "沖縄県宜野座村" "4.99"
[2,] "熊本県嘉島町" "4.39"
[3,] "東京都日の出町" "4.05"
[4,] "沖縄県今帰仁村" "2.92"
[5,] "和歌山県日高町" "2.81"

となっている(単位は%)。それぞれ、医療、漁業、鉱業等で産業があるようである。これらの町村は決して地理的に人口が集中する地域にはないが、人口増加に成功している。調べてみることで、町おこしのヒントがあるかもしれない。

クラスタ4 高齢化農村タイプ

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65歳以上の人口割合(Over65Pct)、年齢中央値(AgeMedium)など高齢者の割合が大きいことがわかる。また、主要産業は農業(A_Agriculture)、漁業(B_Fishery)など、世代交代が課題となっている産業、医療・介護(P_Medical)などの高齢者と関連する産業が盛んである。2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "島根県海士町" "-0.84"
[2,] "北海道西興部村" "-1.5"
[3,] "島根県西ノ島町" "-3.44"
[4,] "大分県豊後高田市" "-4.34"
[5,] "広島県大崎上島町" "-4.87"

となっており、トップ5でさえ人口が減少している。

クラスタ5 公共事業中心の離島タイプ

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公共セクター(S_Public)、建設業(D_Construction)、教育(O_Education)、生活・娯楽産業(N_Entertainment)、飲食・宿泊産業(M_Restaurant)、農業(A_Agriculture)、漁業(B_Fishery)などが主要産業であり、高齢化の程度は日本の中では中程度である。実際に該当する村町名を見ると、離島の自治体が含まれているようである。

2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "鹿児島県十島村" "15.37"
[2,] "沖縄県与那国町" "11.23"
[3,] "東京都小笠原村" "8.55"
[4,] "沖縄県恩納村" "5.27"
[5,] "沖縄県竹富町" "3.52"

となっている(単位は%)。Wikipediaによると鹿児島県十島村は1970年以降人口は減少していたが、2010年~2015年は増加している。表面的には増加した理由は定かではないが、二ケタ増加なので公共事業等何等かの突発的事象があった可能性はある。 

クラスタ6 高齢化が進む農村タイプ

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産業別の人口構成では、農業(A_Agriculture)、鉱業(C_Mining)、生活産業・娯楽(N_Entertainment)、医療・介護(P_Medical)が中心。クラスタ4程ではないが、人口増加(PopIncresePct)は小さく、高齢化割合も大きく、昼間の人口の夜間人口に対する割合(Hiru vs Yoru Ratio)も小さく、過疎が進んでいる状況がイメージでできる。

2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "青森県六戸町" "1.78"
[2,] "宮崎県綾町" "1.73"
[3,] "山形県三川町" "-0.04"
[4,] "長野県原村" "-0.04"
[5,] "宮城県登米市" "-2.36"

であり、上位2自治体以外は人口は減少している。wikipediaによると、2位の宮崎県綾町は、「「有機農業の町」、「照葉樹林都市」などをスローガンとする町おこしの成功例として知られ、自然の中での人間らしい生活を求める全国各地からの移住者が後を絶たない。」とのことで、人口を増加トレンドに引き戻した好例とのことである。

クラスタ7 物流機能を担う自治体

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物流(H_Logistics)、卸売・小売(I_Distributor)に従事する人の割合が高い。また、人口増加率(PopIncreasePct)は比較的大きく、15歳未満の人口割合(Under15Pct)も比較的大きい。物流機能を担う自治体と言えよう。

2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "宮城県大和町" "13.49"
[2,] "茨城県つくばみらい市" "10.54"
[3,] "山梨県昭和町" "10.5"
[4,] "三重県朝日町" "9.73"
[5,] "愛知県阿久比町" "9.04"

となっている(単位は%)。Wikipediaによると宮城県大和町は、周辺の工業団地の物流・流通機能を担う自治体として人口増加を果たしたようである。

クラスタ8 大都市タイプ

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きわめて明快である。IT(G_IT), 金融業(J_Financial_business), 不動産(K_Real_Estate), 研究機関(L_Academic)など、大都市に見られる産業に従事している人の割合が大きい。また、昼間人口比率(昼間の人口の夜間の人口に対する割合)も極めて高いことから大都市であることが類推される。

2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "東京都千代田区" "23.83"
[2,] "東京都港区" "18.65"
[3,] "大阪府大阪市中央区" "18.24"
[4,] "東京都中央区" "14.93"
[5,] "大阪府大阪市浪速区" "12.84"

となっており、大都市への人口流入が続いていることを示している。 

クラスタ9 ベッドタウンタイプ

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産業別就業者の割合では、電気ガス水道(F_Utility)、卸売・小売(I_Distributor)などが中心で、人口増加率(PopIncreasePct)、15歳未満人口(Under15Pct)は比較的高い。該当する自治体を見ると、大都市周辺でベッドタウンとしての機能を担っている自治体が多いようである。クラスタ2と比較すると、研究機関(L_Aacademic)、不動産(K_Real_Estate)の就業者割合は小さい。

2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "福岡県新宮町" "22.93"
[2,] "沖縄県与那原町" "12.94"
[3,] "北海道東神楽町" "10.11"
[4,] "沖縄県中城村" "10.02"
[5,] "宮城県富谷町" "9.67"

となっており(単位は%)、地方都市の周辺ベッドタウンが含まれるようである。住みよい街づくりを整備し、住民の支持を獲得している例といえるかもしれない。

クラスタ10 農業と複合産業が発達した自治体

 

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第一次産業(農業(A_Agriculture)、漁業(B_Fishery))に集中しており、複合サービス(Q_Combined_Service)、公共セクター(S_Public)に従事する人の割合も比較的大きい。人口増加率(PopIncreasePct)は大きくなく、65歳以上の人口割合(Over65Pct)もやや大きく、やや高齢化している自治体と言える。ただし、クラスタ4より相対的に高齢化はしていないようであり、相対的に若い人が残るまたは移住している自治体と言える。

2010-2015年の人口増加率top5を見てみると、

[1,] "北海道東川町" "3.26"
[2,] "北海道中札内村" "-0.92"
[3,] "北海道厚真町" "-1.33"
[4,] "北海道芽室町" "-2.26"
[5,] "鹿児島県与論町" "-2.57"

となっており(単位は%)、トップの北海道東川町以外は人口は減少している。

 

まとめ 

以上10個のクラスターを見てきたが、少子高齢化の中、人口増加に成功した農業中心の自治体もあることがわかる。こういった成功例に着目して、町おこしのヒントを得ることはとても有用かもしれない。